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【文化庁】未管理著作物裁定制度施行へ向けての最新動向と文化庁による関連調査研究

2023年(令和5年)の著作権法改正により創設された「未管理著作物裁定制度」は、2026年(令和8年)春の施行を目指して制度整備が進められています。この制度は、著作権者が不明、あるいは連絡不能である著作物の利用を可能にする新たな裁定手続であり、従来の「著作権者不明等の場合の裁定制度」では対応しきれなかったケースをも包括するものとして期待されています。


文化庁は本制度の円滑な運用に向けて準備をすすめていますが、令和6年度末までに以下の4本の調査研究報告書を公表しました。これらの調査は、制度の実効性を高め、利用者・登録確認機関・権利者それぞれにとって現実的な運用体制を構築するための基盤となるものです。それぞれの調査について、簡単にまとめました。

 

1.分野横断権利情報検索システムに関する調査研究


本調査は、令和8年施行予定の未管理著作物裁定制度の施行にあわせて、制度運用の基盤となる「分野横断権利情報検索システム(以下、本システム)」の設計と要件定義を行うためのものです。

著作物の権利者探索は、裁定制度の申請における「相当な努力」要件に関わる最重要プロセスの一つであり、本システムはその効率化を目的としています。すでに分野ごとに存在している権利情報のデータベース(出版、音楽、美術など)と連携し、横断的に検索可能とする「メタ検索」型の構造が採用される予定です。


調査では、以下のポイントが明確にされました。

  • 利用者ニーズに基づいた画面設計(トップ画面、検索画面、制度説明、問合せ等)

  • 著作物の種別や利用場面に応じて柔軟に検索条件を指定できるUI設計

  • 関係団体等からの情報提供・連携意向のアンケート実施

  • デジタル・ガバメント標準ガイドラインやサイバーセキュリティ基準に準拠した設計

  • 文化庁・民間団体等による意見交換の場としての「関係者協議会」「説明会」の開催


今後の課題としては、検索対象とするデータベース群の精査、各団体の協力体制整備、費用対効果の検証などが挙げられており、令和7年度中に具体的な実装設計が進む見込みです​。


 

2.個人クリエイター等の権利情報を登録する仕組みに関する調査研究


この調査研究では、従来の集中管理されていない著作物、特に個人クリエイターによる創作物に関する「自発的な意思表示」を可能とするプラットフォームの構築を目指しています。令和5年からの継続事業として、音楽分野中心の「権利情報登録システム」を、イラスト・文芸・動画・写真等を含む分野横断型に拡張する形で検討が進められています。

システムの主な特徴は以下のとおりです。

  • クリエイター本人によるプロフィール、連絡先、作品情報の登録機能

  • 登録情報の第三者による検索・確認機能(利用の可否確認)

  • 著作物ごとの利用条件、ライセンス表示の明示

  • プラットフォーム運用に必要な体制(運営主体・サポート窓口など)の検討

  • 登録料・更新料の有料化可能性についてのアンケート調査も実施


このシステムは、未管理著作物裁定制度において「管理されていない」と判断する前提として、まず意思表示がされていないことを確認する場として機能する予定です。つまり、「未管理か否か」を区別する前段階で重要な役割を果たします。


なお、利用者(クリエイター)視点での課題も報告されており、「個人情報の公開への抵抗感」「入力作業の負担感」「信用性の担保」などに対して、利便性やセキュリティの両立をどう図るかが今後の課題です


 

3.著作物等の利用に係る裁定補償金額算定式精緻化に関する調査研究


本調査は、現行の「裁定補償金額シミュレーションシステム」に用いられている補償金算定式を多様な著作物・利用形態に対応できるように拡張・精緻化することを目的としたものです。令和8年に施行予定の未管理著作物裁定制度では、補償金の算出は登録確認機関が担うこととなるため、実務上の基盤整備として重要な調査です。

調査内容の要点は以下のとおりです:

  • 裁定申請実績の分析(著作物の種類、利用目的、過去の補償金額の傾向)

  • 使用料規程の収集とヒアリング(著作権等管理事業者、関係団体)

  • 業界ごとの価格帯、交渉慣行、使用頻度をもとにした料率案の作成

  • 各種著作物に応じた算定式の整理(例:文字作品、写真、漫画、脚本、美術など)

  • 利用形態別の分類(印刷、ネット配信、上演、商品化等)


特に重要なのは、各算定式が「透明性」「簡便性」「妥当性」を兼ね備えることです。

制度の円滑な運用には、利用者が自主的に目安額を計算できることが不可欠であり、本調査結果は、登録確認機関における実務マニュアルや文化庁ガイドラインに組み込まれることが予想されます​


 

4.未管理著作物裁定制度の創設等を踏まえたオンライン裁定手続の在り方に係る調査研究


この調査では、未管理著作物裁定制度を含む裁定申請手続全体の「オンライン化」に焦点を当てています。現行制度では、メールや紙ベースによるやりとりが中心であり、複数の関係者が関与する未管理制度の施行後には、非効率な手続が制度運用のボトルネックになる懸念がありました。

調査では、制度関係者(文化庁、著作権団体、利用企業)へのヒアリングとワークフロー分析を通じて、以下のような設計が提案されました:

  • 登録確認機関・指定補償金管理機関・文化庁の三者連携を前提としたシステム構成

  • 利用者インターフェースの設計(申請補助、算定式自動化、ファイル提出機能など)

  • 裁定補償金額シミュレーションや権利情報検索とのシステム連携

  • 書類提出が困難な高齢者・デジタル困難者への対応(印刷・郵送など)


さらに、今後のオンライン化に向けては「複数システムの連携」か「一元化システムとするか」などの大きな方針決定が必要であるとされており、コスト・運用体制・ユーザビリティを考慮した政府の意思決定が求められています​


 

今後の見通しと制度施行に向けた準備状況

令和5年に改正された著作権法により創設された「未管理著作物裁定制度」は、令和8年5月26日までに施行される予定です。文化庁はこの制度施行に向けて、以下のような整備を進めています:

  • 登録確認機関・指定補償金管理機関の登録制度(令和6年度中に詳細公表予定)

  • 仮登録制度の運用(登録希望団体の受付が開始)

  • 関係システムの構築(検索・登録・補償金計算・オンライン申請)

  • 裁定制度全体のデジタル化・ガイドライン整備


「未管理著作物裁定制度」は、デジタル時代における著作物の円滑な利用と、著作権者への適切な保護・還元を両立させる新たな制度です。文化庁の令和6年度調査研究は、その施行に向けた制度の「インフラ整備」ともいえる重要な土台です。

今後も関係動向を注視していきたいと思います。




【関連記事】

著作権行政に関する情報


【参考資料】

▼令和6年度分野横断権利情報検索システムに関する調査研究

▼個人クリエイター等の権利情報を登録する仕組みに関する調査研究

▼令和6年度著作物等の利用に係る裁定補償金額算定式精緻化に関する調査研究

▼未管理著作物裁定制度の創設等を踏まえたオンライン裁定手続きの在り方に係る調査研究



 

【著作権行政に関する情報集】


 

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