
2025年2月26日、作家・吉本ばななさんの名前を騙った電子書籍が、アマゾンの電子書籍サービスで販売されていたというニュースが報道されました。
吉本ばななさん名で偽の電子書籍、削除 「まさかこんなに堂々と」
吉本ばななさん本人が関与していない書籍が、その名を使って販売されていたという事実は、インターネット上で販売されているコンテンツの様々な法的問題を浮き彫りにしています。
―なぜこのような電子書籍が販売されたのか?
今回、吉本ばななさんの名義を無断で使用した電子書籍が、アマゾンのKindleストアで販売されていたということですが、吉本ばななさんのXや、各種報道によると、この電子書籍は本人の許可なく、まるで吉本ばななさんが執筆したかのような形で販売されていたということです。
このことは、著作権、パブリシティー権、詐欺罪など、様々な法的権利に抵触する可能性があります。吉本ばななさんは、本人のXで「誰がこんなことをしたのか調査中だが、被害に遭わないように注意してほしい」と呼びかけています。
近年、電子書籍やウェブメディアの普及により、著名人の名前を騙った偽のコンテンツが販売・拡散されるケース が増えています。特に、電子書籍市場は 個人出版の参入障壁が低いため、違法行為が発生しやすい環境 になっているのが実情です。
―電子書籍販売プラットフォームの問題点
アマゾンのKindleストアでは、個人でも比較的簡単に電子書籍を出版できるシステムが整っています。しかし、その反面 著作権チェックの不備や発売前の審査体制の甘さも指摘されています。今回吉本ばななさんは、最初アマゾンに連絡をしたそうですが、なかなか対応されず、削除まで時間を要したようです。問題が発覚しても削除対応が遅れるケースが多いことから、不正な書籍の販売を助長し、被害者を増やす原因になっているとも考えられます。
また電子書籍プラットフォームは、誰でも出版が可能になるという便利さがあります。一方でこのことは、著者の本人確認が厳格でなかったり、書籍の内容チェックがAIによる自動審査のため、不正が見抜きにくいという点があることも事実です。
このような問題は、今回のケースのように「プロの作家の利益」を侵害するだけでなく、消費者の利益を侵害することにもなります。
今回のケースで考えると、「吉本ばななさんの本を期待して買ったのに、まったくの偽物だった」「内容が低品質であり、詐欺的販売に遭う可能性がある」「著作権を無視した海賊版が出回ることで、本物の作家の権利が侵害される」といった問題が発生する可能性があります。つまり、著名人の名前を騙る行為は、作家本人だけでなく、読者にも悪影響を与える問題なのです。
―今回の事件の問題点
今回の事件の問題点を整理すると以下のような問題点が上げられます。
① パブリシティ権の問題
パブリシティ権とは、有名人の氏名や肖像を商業的に利用する権利 のことを指します。この権利は法律で明文化されていませんが、「肖像等は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利」として、判例(平成24年2月2日最高裁判決 等)で認められている権利になります。今回、吉本ばななさんの名前を無断で使用し、まるで本人が執筆したかのように見せかけた電子書籍を販売する行為は、パブリシティ権の侵害 にあたる可能性があります。
② 詐欺罪の問題
消費者が「吉本ばななさんの本」と信じて購入したにもかかわらず、実際には無関係の人物が執筆した偽物であった場合、これは詐欺罪(刑法第246条) に該当する可能性があります。
③ AIによる著作権侵害の可能性
今回の書籍について、AIを活用して文章を作成したものではないか、との指摘がされています。近年、AIを活用して文章を自動生成する技術が急速に発展しています。今回の事件でも、仮に吉本ばななさんの書籍を大量にAIに学習させ、AIによって本件書籍を生成し、その書籍を吉本ばななさんの本として販売したとなれば、それは、著作権侵害を指摘できる可能性もあります。
電子書籍のプラットフォームが誕生し、そこに誰でもコンテンツを発表できる環境は、これまで世に出すことができなかったコンテンツを発表できることから、決して悪いことではないと思います。しかし今回の事件のように技術は悪用されてしまうこともあります。仮に、紙の出版社が、吉本ばななさんの偽書を一時的にでも出版していたとしたら、それは大問題でしょう。電子書籍だから、インターネットだからといって許されていいもんではありません。
いろいろ考えさせられる事件であると感じました。
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